【映画】クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲

映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲

【タイトル】クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲
【監督】原恵一
【主演】矢島晶子 ならはしみき 藤原啓治 こおろぎさとみ
【時間】89分

---《あらすじ》----------------------

昔の番組や生活が再現された「20世紀博」というテーマパークが作られ、
大人たちは懐かしさに夢中になっていた。
そんな大人たちに付き合わされて、子どもたちはうんざり。
ある日、TVで「20世紀博」から
「明日の朝、お迎えにあがります」
という言葉が流れた瞬間から、大人たちは豹変。
家事も仕事も忘れ、子どものように遊ぶようになった。
そして、TVの言葉通り「20世紀博」から迎えの車が来て、
子ども達だけを街に残して去ってしまう。



---《レビュー》----------------------

なんでしょうね、『ALWAYS 三丁目の夕日』がもてはやされると、
この作品を見たくなります。広めたくなります。
劇中風間くんが言っていた「『なつかしい』ってそんなにいいものなのかな?」という言葉が浮かびます。
「日本中が涙した」って、
私はDVDを定価で買ってしまったことに涙した人間ですよ。
あのCGの技術と、大道具・小道具さんたちの努力は一見の価値があると思いますが。

「古き良き時代」って何なんでしょうね。
昭和30年、40年なんて
電車は今よりずっと遅いし、
公害問題真っ只中だし、
ストーカーだって「一途な片思い」で済まされてしまうだろうし、
DVだって今以上に「夫婦の問題」で片付けられるだろうし、
30代独身はめっちゃ肩身狭そうだし、
今以上に「女は家庭」って観念強いし、
個人情報保護法なんて無いし、
洗濯機は音うるさそうだし、
大学進学率低いし、
ヲタクへの偏見なんて現在の比じゃないし、
体育の授業では平然とうさぎ跳びやらされるし、
24時間営業のコンビニなんて無いし、
そもそもケータイもパソコンも無いんですよ!
不便極まりない。
「プロジェクトX」で炊飯器が作られる過程を見たとき、
炊飯器の企画に対し、ある上司が
「そもそも君、早起きして飯を炊かない女なんて嫁に欲しいか」
と言ったことが未だに忘れられませんよ。
現代に生んでくれてありがとう、と本気で思いました。
ご先祖様の女性方には本当にお疲れ様でしたと手を合わせたいです。

結局のところ、
「問題」なんてそれぞれの時代に山積み。
それなのに世間知らずだった子どもの頃と、
ネットで世界中のニュースをぱっと確認できる今を比較するなんて、
全くもって不平等。
無くしたものを取り戻す努力もせずに、ただただ懐かしがって「無い」ことを嘆くなんて、
ゆりかごで泣いている赤ん坊ですか?
--はい、ちょっと言い過ぎました。
ただ一方的な比較が好きではありません。
せめて「『不便だったけれど』良い時代だった」くらい言って欲しいです。


とりあえず、言いたいことは、
むやみに懐かしさを振り回して一方的な賛美を送る作品より、
「懐かしさ」の虜になったオトナたちに立ち向かって未来を勝ち取った子どもたちを描いた作品の方が
私は好きだし、もっと評価されていいと思います。
前向きでいいじゃない。


「泣ける作品」という評価は好きではないのですが、
(「泣ける」=いい作品ではないし、そもそも「感動」=「泣ける」でもない。
もっと言うなら、全ての作品は「泣く」ために作られているものではない。)
でもこれは間違いなくそこそこの年齢の人には「泣ける作品」でしょう。
これでぐっとこない人は日本人じゃないよ、と言いたくなるくらいです(笑)
ひろしが「大人である自分」を取り戻す過程の演出は本当に上手い。
普段はダメ親父っぽく描かれるひろしが、
みんなと同じように努力し・苦渋を味わって、
そしてしんのすけとひまわりの父親になったという、
一人の人間のドラマを
ただやさしい音楽を流すだけて描いたことによって、
多くの大人たちの共感が得られたと思います。
大人たちは「ひろしの人生」を見ながら、同時に自分の人生を見ているのです。
上京の経験もないし(まあ実家住まいではないですが、そもそも遠くないですし)、
子どもを持った経験もないですが、
語りきれないたくさんの経験が「今」を作っているし、
それらが「大人」にしていくんだ、というのは伝わってきます。


それから、この作品では「匂い」が鍵になってきますが……
「匂い」だなんて、センスがありますよね。
形がないけれど確実に異なる物。
曖昧でありながら確実に存在する物。
漠然としながら、確固たるイメージが観客の中にある物。
イメージだけで伝えやすい物。
あと、絵描きや声優さんの技術に頼らずに描ける物(笑)
……というか、絵や声で特定すると、
場合によっては観客の共感を欠くので、
具体的に表現しなかったことが「吉」と出ていると思います。

また、スナックでの子どもたちの会話は、
いつも通りのギャグでありながら、
さりげなく作中での「匂い」の重要性に触れているのがすごかったです。
会話はクレしんらしくて笑えるし。


難癖をつけるなら、チャコの演技力がちょっと……というところくらいですが、
まあ彼女はああいう不器用な人間なのよ、
って思えばOKだと思います。
ああ、それから。
春日部はあんなに田んぼだらけではないと思います(笑)
行ったことありませんが。
秩父だってもっと拓けているもの。
映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 [DVD]